診察や健康診断の際に行う検査や処置の詳しい内容についてご案内いたします。
タカサクラガーヤ動物病院では、飼い主の皆さまにも治療方針や検査内容の詳細をご説明いたします。
ご不明な点などはお気軽にご質問ください。
血液検査
血液検査という場合、いろいろな検査がありますが、ここでは、ルーチン検査と呼ばれている必要最低限の検査について、それぞれの検査内容をご説明差し上げます。
基本的には、ご家族の皆様がご病気の時や定期健診(人間ドッグなど)の時、病院で検査していただく項目とほとんど同じです。動物病院で、「血液検査」という場合、最低でも、血球数計算検査、白血球鑑別検査、血液生化学検査、電解質検査などを行わなければ、ペットさんたちの状態を正しく判断することが極めて難しくなります。
動物の場合、手や足(または頸部)の血管から、採血を行います。ただし、一人で採血することができませんから、ペットさんたちの採血では、最低スタッフが二人必要になります。採血する人と保定(動物を動かないようにして、血管をしっかり確認できるように押さえておくこと)する人で行います。
採血は、滅菌されたディスポーザブル(使い捨て)の針と注射器で行います。採血後、止血のため、少し押さえておきます(収縮性のある包帯などを使うこともあります)。採血する量は、普通、1ml(小さじの5分の1程度)で、いろいろな検査を十分に行うことができます。採血した血液は、そのままでは、血液が固まってしまうので、血液凝固剤というものが入った容器の中に入れたり、そのままで血清という血液の液体の部分だけを使うこともあります。
検査は、以下のような項目を院内の機器を使ったり、外部検査機関に依頼することで行います。
血球数計算検査および 白血球鑑別検査は、採血した血液(抗凝固剤入り)を使って行います。血球数検査では、赤血球数、白血球数、血小板数を専門の機器でカウントし、血球数の増加や減少に注目します。いろいろな病気で、基準範囲外の値になったりしますから、体の状態を検査する基本的な検査の一つです。
どんな種類の白血球がどのくらいあるのかを検索する検査です。白血球鑑別検査では、どんな種類の白血球が多くなったり少なくなったりしているか、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球などの数を確認します。いろいろな病気で、白血球が変化します。そして、その内容によって、病気の状態を解析することも可能です。
検査の結果に関しては、詳しくご説明差し上げます。ご質問は、どんなことでも結構でございます、獣医師またはスタッフにお尋ねください。
採血した赤い血(血液)は、遠心器という器械にかけて回すと、血液細胞の血球と液体成分の血漿(または血清)に分かれます。その血漿(または血清)を使って行う検査が、血液生化学検査と血液電解質検査です。
血液生化学検査は、肝臓や腎臓の働きや何か異常があるかどうかを調べるために行います。この検査だけで、この臓器が悪いということが分かる場合もありますが、他の検査との組み合わせが重要なこともあります。
ですから、確実に診断するためには、しっかりした検査が必要です。ルーチン検査(健康診断のための第一次検査)では、総たんぱく質量(TP)、アルブミン量(ALB)、ALT活性、ALKP活性、血液尿窒素量(BUN)、クレアチニン量(CRE)、グルコース(血糖)量(GLU)、グロブリン(GLOB)です。病気が疑われる場合は、これらの項目に加えて、リパーゼ (Lipa)、総ビリルビン(T-Bil)、コレステロール(Chol)、カルシュウム(Ca)、無機リン(Phos)(ネコちゃんの場合は、AST活性を加える)なども測定します。
院内で迅速に行えない検査は、外部の検査機関へ検査を依頼します。血液生化学検査、血液学的検査、内分泌検査、自己免疫検査、アレルギー検査、薬物分析検査などいろいろです。
血液電解質検査も採血して血液を使って、血液の中のナトリウム(Na)、カリウム(K)、クロル(Cl)量を測定します。
検査のや内容結果に関して、詳しくご説明差し上げます。ご質問は、どんなことでも結構ですから、お気軽に獣医師またはスタッフにお尋ねください。
検査の結果に関しては、詳しくご説明差し上げます。
ご不明な点は、どんなことでも結構です、獣医師または動物病院スタッフにお尋ねください。
尿検査
ペットさんたちのご家族の皆様は、ご自分の尿の検査を病院で行っていただく時、どのようにされますか。当然、ご自分で採尿されますね。
ペットさんたちはどうでしょうか?私達のようにハイ出してくださいとお願いしても、決して尿を出してもらえません。たまに、緊張しすぎて(興奮しすぎて)出すこともありますが、あまり期待できません。ですから、他の方法で採尿する必要があります。ワンちゃんであれば、ペットシーツの上とかお散歩で出してもらうことで、尿検査できることもあります。
どうしても採尿できない場合は、超音波装置で膀胱を確認して、滅菌したディスポーザブル(使い捨)の針と注射器を使って、1mlくらい採尿します。これは、膀胱穿刺という方法で、お腹の方から針を刺して、尿を採取します。このようにして採った尿を検査することで、ペットの腎臓の状態とか他の体の異常がはっきりします。このようにして採尿する場合、最低二人で行う必要があります。
尿は、腎臓に流れ込んで、ネフロンと言うところで作られ、尿路を通って排泄されます。
尿の成分や量は、
1)血液成分の変化と腎臓の血流の状態
2)腎臓のろ過能力、再吸収・分泌の能力
3)尿路の状態
の3つによって変動します。尿は、腎臓・尿路系の病気の鋭敏な指標であり、また、多くの全身性の病気でも診断上の有用な情報を含んでいます。採尿後、できるだけ早く「尿の外観(色調、清濁)」を調べ、比重計で尿比重を測定します。尿比重の減少が、腎臓の機能障害をいち早く示す指標の一つです。尿スティックによる簡易検査で、尿pH、尿蛋白、尿糖およびケトン体、尿潜血反応を調べます。
尿を遠心して得られる沈殿物を顕微鏡で観察して、その異常を確かめる検査を尿沈渣検査と言います。尿沈渣には、細胞を含むこともありますし、バイ菌や結石のこともあります。バイ菌や細胞の検査では、サンプルを染色して、よく見えるようにして検査したり、バイ菌が原因で病気が起こっていると考えられる場合は、バイ菌の培養検査を行います。
尿は、貴重なサンプルです。待合室などでお漏らしした時は、是非、スタッフへお伝えください。
早速、尿検査をしてチェックすることができます。
便検査
便の検査も尿検査同様、ペットさんたちにお願いしても今すぐというわけにはいきません。
新鮮なサンプルを検査に使うことはできません。普通、採便棒と呼ばれるものをお尻の中にやさしく入れて、新鮮な便を採ってくるようにしています。このようにして採った便は、寄生虫の卵がないかどうか、原虫がいないかどうか、異常に特別な細菌が増えていないかどうかを調べます。
便を採取する場合も、軽くペットさんたちを保定する人と採便する二人で行う必要があります。
寄生虫の卵の存在を確認するための糞便浮遊検査、原虫検査のためには新鮮糞便(生食水混合)の直接塗抹検査を行います。下痢の場合は、糞便塗抹標本の染色を行い、異常な微生物を検査します。
心電図検査
血圧検査
ペットさんたちの血圧?と思われる方が多いかもしれません。ペットさんたちも皆さんと同じように、血圧を測定します。
測定原理は、ヒトの場合と同じですが、カフを巻く場所、手と足、そして尻尾(しっぽ)も使えます。しかし、落ち着きのない子とか、毛が長くて測定できない場合もあります。
犬や猫の最高、最低、平均血圧は、ヒトと同じような値です。ワンちゃんでは、収縮期血圧>160mmHg、または、拡張期血圧>120mmHgの場合、全身性の高血圧の可能性があります。動物では、多くの場合、高血圧が他の病気によって引き起こされています。ただし、興奮したり、一時的に高血圧になることがありますから、血圧測定を何回かに分けて行う必要があります。
レントゲン検査(X線検査)
体の中を覗き込むために、レントゲン(X線)を使って体の中を透かして見ることができます。このようにして、何か異常が起こっているのかいないのかを調べようという検査です。
検査を行う場合、血液検査の採血と同じで、2人以上のスタッフによってペットさんたちが動かない状態で撮影することが必要です。撮影する体の部分によって、いろいろな体勢になっていただきます。どの撮影でも、必ず、二方向から行うようにし、できるだけ二次元のX線像(影絵)から、三次元の像がイメージできるようにします。
撮影枚数は、ペットさんたちの大きさによって違ってきます。たとえば、20Kg以上のワンちゃんと4Kgのネコちゃんの腹部X線検査を比較してみると、20Kg以上のワンちゃんでは、お腹の右側を下にした写真を撮ります。胸の後ろの横隔膜から肝臓、胃を含む写真が1枚、そして、その後ろの膀胱まで含む写真が1枚、体位を変えて、お腹の方から背中の方へ向かう撮影を同じように行うため、合計4枚(最低4回の撮影)になります。
一方、ネコちゃんの方は、右側のお腹を下にして一枚。そして、お腹から背中に向けてての撮影で、撮影回数は2回になります。
各種造影レントゲン検査(X線検査)
骨や肺などとは違って、胃、腸はX線ではっきり見ることができません。まわりの体液、筋肉などとの間にあまり大きなX線吸収の差がないことによるものです。
積極的に影を作って、X線で検査する方法を、造影検査と呼びます。消化管内の検査では、バリウムなどを飲んでもらったり、または、飲ませます。動物で行う造影検査では、多くの場合、全身麻酔が必要になります。たとえば、人でも行う胃二重造影では、犬や猫の場合、まず、全身麻酔をかけて胃の中にチューブを差し込んで、バリウムと空気を別々に入れて検査します(麻酔の項を参照)。
レントゲン造影検査の他に、食道・胃・腸内視鏡検査や腹部超音波検査を行うことによって消化管を、内側からと外側から検査することもできます。さらにCTやMRI検査が必要な場合は、信頼おける外部検査機関を利用していただくことができますが、検査中にじっとしてくれないペットさんたちでは全身麻酔が必要です。
超音波検査(エコー検査)
心臓と腹部の検査、胸部、体表、関節、眼など体のいろいろな部分を体の表面から検査します。検査は、ペットさんたちが動かない姿勢にして行いますが、心臓の場合は、右下にして横になって行い、その後左下にして観察します。
腹部の場合は、お腹を上に向けたり、横になってもらったりして行います。人の場合とは違い、毛が長いペットさんたちでは、毛刈りが必要になります。その部分にエコー用のゲルをたっぷり付けて、プローブと呼ばれる体の中を見るものを直接体の表面に当てモニターで体の内部を観察します。エコー検査では、”水”は黒く映り内部の様子を見やすくしますが、”空気(ガス)”は白くなるため内部の構造を見にくくします。
心臓の検査では、レントゲンでは形とか大きさの違いしか分かりませんでしたが、超音波検査(心エコー)では心臓の内部の様子がよく分かります。心臓の内径の変化、断面積、容積の変化、心筋壁の厚さと運動、弁の狭窄や閉鎖障害などが観察できます。心臓や血管の血液の流れは、カラードプラという方法で色付けされた画像になり、分かりやすくなっています。さらにパルスドプラや連続波ドプラという方法を使うと血液の流れが波形として表示されるため、流速や波形の形状を観察でき異常血流を見つけることができます。
腹部検査(腹部エコー)では、お腹の中の臓器の内部にあるコブや液体がたまっていることを確かめることができます。コブの形や内部構造が分かります。カラードプラという方法を使うとそこにある血管の状態を観察できます。
その他の部分、胸の中の様子や体の表面のコブや血管の状態も検査できます。また、コブから細胞を取り出してきて(バイオプシー)、病理検査を行うことがあります。普通、超音波検査では、麻酔は必要ありません。
内視鏡検査
食道・胃・十二指腸&大腸
上部消化管(食道、胃、十二指腸)と大腸の中を見て検査する内視鏡検査についてご説明します。
この検査は、口とかお尻の穴から先端にカメラが付いた長い管を入れて、普通では見えない口や口から奥の消化管、お尻やその奥の腸の状態を観察するものです。口の奥のところは上部消化管で、お尻の奥の部分は大腸です。カメラの映像は直接モニターに映し出せるようになっていますから、どこが異常なのかすぐ分かります。
上部消化管内視鏡検査を行う主な症状
- 飲み込むことが難しい(嚥下困難)
- 食べたものを吐きもどす(吐出)
- よくゲッコゲッコと吐く(嘔吐)
- 血液を吐く(吐血)
- 何日も続く下痢(慢性の下痢)
- 食道内や胃に異物が詰まる
大腸内視鏡検査を行う主な症状
- 大腸性下痢(下痢が少量で何回も出るような下痢)
- しぶり
- 血便
- 排便時の痛み(排便困難)
- 直腸のコブ(触診できるものや直接見えるもの)
- 大腸が何らかの原因で詰まっている
- 便に粘液が異常に付着している場合
人の場合、上部消化管や大腸の内視鏡検査は、内視鏡の管(スコープ)が入るのを我慢していただいて行います。しかし、犬(イヌ)ちゃんやネコちゃんでは、我慢してもらうことはできませんから、必ず気管内チューブ挿管の全身麻酔でこの検査を行います。麻酔は、外科手術を行う時と同じようなものです。内視鏡検査では、多くの場合、異常と思われるところやその周辺の組織の一部を採取して(バイオプシー)、病理組織検査を行い、診断や治療に役立てます。
犬(イヌ)ちゃんやネコちゃんでは、いろいろな検査や手術で全身麻酔を行うことが多いものですが、その時、普段できないような口腔内の詳しい検査、歯石除去(歯のクリーニング)やポリッシングなども行います。食道・胃・十二指腸内視鏡検査も必要であれば、そのような麻酔時に一緒に行うこともできます。
その他の詳しい検査
眼科検査
眼の病気の診断のために、いろいろな機器、器具を使って行いますが、難しい、治りにくい眼の病気では獣医眼科専門医をご紹介します。
眼科の病気でも、全身の状態を観察することから始め、その後、目の周りと眼の中を検査します。そして、さらに検査を行って眼の病気の診断を行います。
- 検眼鏡による目の中や周りの検査
- 眼の結膜細菌や細胞を調べる顕微鏡検査(細胞診)
- 眼圧計による眼圧測定
- 涙の量を測定する検査
- 色素による角膜の検査
- 超音波検査(エコー)で眼の中を観察
必要に応じて、血液検査や他の検査が必要になることがあります。
ワンちゃんやネコちゃんは、上記のすべての検査を嫌がりますから、検査が十分できないこともあります。