【No.86】鼻: 匂(にお)いの話

ヒトを含む哺乳動物の顔の真ん中にある鼻。重要な役割は呼吸ですが、今回はその鼻の中にある情報収集器官(嗅覚器)に関するお話しです。

外からは見えませんが、鼻の奥の天井部分には、嗅覚上皮(きゅうかくじょうひ、嗅上皮)と呼ばれる嗅覚をつかさどる受容器があります。この嗅上皮には多くの嗅細胞という匂いを感じる神経が存在し、鼻から吸い込んだ「匂いの分子」をとらえて、ある種の信号に変え、その情報を脳へ伝達しています。ヒトでは約500万個の細胞数、ワンちゃんでは、犬種にもよりますが数億個の嗅細胞があると言われています(文献1&2)。

嗅細胞の表面には、嗅覚受容体と呼ばれる匂い分子を受け取るためのセンサーがあります。その受容体の遺伝子数(~受容体数)は、ワンちゃんの方がヒトの2倍以上です (ちなみにゾウは、ヒトの5倍です)。遺伝子の数が多ければ、嗅ぎ分ける匂いの種類が多くなることが考えられます(文献2)。

インターネットや動物の本では、イヌの嗅覚について「イヌはヒトの1億倍鼻が良い!」などと記載されています。この数値はちょっと疑問で、まだ科学的に証明されていません。しかし、ワンちゃんの鼻は、ヒトよりもかなり良いということは間違いないようです。

ワンちゃんでは、「散歩中、草むらに入って匂いを嗅いでいる」「よく床をクンクンして舐めている」「散歩中、いろいろなところで転がって遊んでいる」「鼻を他の犬の尻に突っ込もうとする」「体をすりすりしてくる」などの行動をします。ネコちゃんも、「お部屋の中で転がって遊ぶ」「体をすりすりしてくる」など可愛いですね。

ワンちゃんとネコちゃんでは少し違いがあるかもしれませんが、匂いのマークを残したり、匂いを嗅ぐことで、周りの環境の情報を得たり、動物同士のコミュニケーションをとったりしています。匂いをかぐことによって、ストレスの解消をしている場合もあるようです(文献3)。

アロマや香水などを使用して、ご家族が好きな匂いをお部屋に拡散しておられますか。ヒトが感じる「気持ちのよい」匂いですが、私たちが感じる「素敵な匂い」とワンちゃんやネコちゃんが感じる「素敵な匂い」にはかなりの差があるので、注意してください。また、シャンプー後に残る匂いにも気をつけましょう。

多くのワンちゃんやネコちゃんは、毎日、比較的穏やかに過ごしています。単調な生活にならないように、ワンちゃんであれば、お散歩のときに思いっきりクンクンさせてあげるとか、ネコちゃんであれば、食欲をそそるような匂いをプレゼントしてあげてください。ストレス発散!

文献1:「イラスト解剖学」松村譲児著、中外医学社(2011年)
文献2: 「嗅覚はどう進化してきたか ー 生き物たちの匂い世界」新村芳人著、岩波書店 (2018年)
文献3: 「犬であるとはどういうことか (Being a Dog: following the dog into a world of smell)」 アレクサンドラ・ホロウィッツ (Alexandra Horowitz)著、竹内和世訳、白揚社(2018年)

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